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  • Mar 14, 2017

“装飾”という技の視点から楽しむ、映画「ミュージアム」のアートな世界!

昨年11月に劇場公開され、初週末で興収2億4千万円を超え、SNS上では10~20代の男女を中心に「息をするのを忘れるほどの圧倒的緊張感!」「まるで悪夢!カエル男の妻夫木がスゴすぎ!」と、絶賛コメントが続出した話題の映画「ミュージアム」が、はやくも、3月16日より、ブルーレイ&DVDリリースとなる。

今回リリースされるブルーレイ&DVDには、豪華特典映像やイベント映像集など盛りだくさんの内容が収録されている。その中から一部の特典映像が報道陣に公開され、本作の監督の大友啓史氏と装飾を担当した渡辺大智氏が登壇、制作現場を振り返りながらエピソードを語ってくれた。

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――今日は装飾担当の渡辺さんとご一緒ですね。この組み合わせでの対談は初ということですが。

大友:はい。大智君は、装飾というディテールをつくり上げて行く仕事をやってくれています。ずっと一緒にやっているんですが、彼がつくり上げるディテールには魂が宿る、色んな意味で。彼の仕事の中にソウルを感じるんです。僕も彼の話を聞いてみたくて(笑)。演出の面からとは違う、もうひとつの側面があるので、その辺が伝わるといいなと思っています。


――映画の装飾という仕事はどんな仕事ですか?

渡辺:台本を読んで、活字になっている部分と、なっていない部分を、画(え)にするために、美術の方が絵をかきますよね、それを具現化するというのが装飾の担当になります。

大友:生活感も作って行かなきゃいけない。“美意識と生活”。さらに映画のセットには俳優が入りますから、彼らのイメージを触発していかないといけないですね。セットの中に俳優部が入って、彼らがどう思うか、役作りのためにも大事なんです。


――全てに関わる、気を配るポイントの多い仕事のようですね。

渡辺:めちゃめちゃ気は使います。照明もそうだし、音も全部絡んでくるので。ある意味、僕らが決められる、ということもあります。…そう考えると全部ですね。

大友:そうそう、あと匂いもあるね!役者に何を感じさせるかっていう重要なところ。


――生活感といえば、劇中の堤優一の部屋なんかもすごかったですね。

渡辺:まずは秋葉原に行って、男の子をナンパしました(笑)。「牛丼おごってあげるから」って言って、一緒に行動したんです。いろいろ実際に話したりして、そこから始めました。脚本には書かれていない、キャラクターの生態を理解していく必要があるので。


――屋外でのカースタントのシーンなども大変そうですね。こういったシーンでも装飾の作業があるのですか?

大友:僕は騎馬戦をやりたかったんです。車を“肉弾戦”しているように見せるにはどうしたらいいかな、と考えていたんですよね。

渡辺:はい。日本の道って、電柱にも当てられないし、何も当てられないんで、アクションで派手に見せられるものって何かないかなあって考えるんです。ぶつかるたびにガラスの破片を撒いたりとか…、でもそのガラスも、本物を撒いちゃうと俳優の顔が血まみれになっちゃうから、痛くないガラスをまいたりとか…。もう本当に細かいことなんですけど、映ったらラッキーぐらいの感じでやっています。


――カエル男の霧島邸のシーンはいかがでしたか?

渡辺:霧島邸、“ミュージアム”という言葉をどう表現するか、どんなふうに病的に、異常性あるようにみせるかというところが難しかったです。たくさん美術館を観に行きましたが、最終的には、東京駅前のKITTE、あの展示量に負けないようなコレクションの物量を表現したいと思いました。霧島邸は、霧島の親父の趣味なわけですが、“こういう家庭に育ったら、ああなっちゃうかもな…”と。セットはとある体育館内にあったんですけど、そこに籠って一日じゅう作業していました。10日間はみっちり籠っていたと思います。そうすると、日に当たれないんですよ。それでもう、大友さんを嫌いになりそうでした(笑)。僕神経が細いんで、そういうところにいると本当に滅入ってくるんです。それで殺人鬼の部屋をつくっているわけじゃないですか。だから、“…ああ、これはおかしくなるな…。あいつは先天的にも外に出られない奴だし…。”って。
ふつう、昼飯とか外で食べるとうまいじゃないですか。でも、霧島はそういうこともできないんだなっていう…。心が痛くなりましたね。

大友:「こいつは日を浴びることも出来ないんだ」っていうことを、彼が横でふっと言ってくるんですよ。撮影が始まってしばらく進んで行くと、ちょっとマヒして来ちゃって、本質から遠ざかりそうなことがあるんだけど、本質としてこういうのを言ってくれるの、大事だよね。
あとね、空間の中に、チョイスがあるの。例えば、でっかい中華包丁。ちゃんと主体的に俳優が手にしてくれるのを待っている、そのチョイスを作ってくれているというのはすごく大きい。
美術は構成を考える仕事だとすると、装飾という仕事は、もっと細かく、キャラクターのストーリーをつくっているんですよ。そして生活空間だから、ちゃんと飾っていかなければならない、っていう、手間暇含めて、もっと見直されていい、ハードルの高い仕事だね。
動きとか、考えとか、空間で人は変わるんだよね。映画って、嘘から誠を作る仕事だから、ほんのちょっとでも誠に近い環境を用意したいっていうのがありますね。

渡辺:はい。やっぱり考えて想像する部分が大きいですよね。私生活でも、考えていない時間はないし、今見たものが例えば2~3年後に生きてくるだろうとか、毎日毎日考えています。きっと装飾の仕事している人はみんなそうだと思います。慣れると、楽しくてしょうがないですよ。


――装飾という仕事、今後、映画の枠を超えVRなどの分野でも活躍の幅がありそうですが、ご興味などはありますか?

渡辺:実は、最近よくやりたいと思うんです。「バーチャルばあちゃん」とか。あれ、考えた人すごいと思うんですよね。ばあちゃんの家とか、ああいう空間のものは、めちゃくちゃ作り込みたいですよ!

――どうもありがとうございました!

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映画「ミュージアム」、グロテスクで猟奇的な描写が苦手だと、なかなか観るのに勇気が必要…という方もいたのではないだろうか。だが、今回のお二人のインタビューを通じて、映画の“装飾”という観点からこの作品を観てもらうと、あらゆるシーンで “アートな視覚”を刺激されることだろう。俳優たちが演じるキャラクター、そしてそのキャラクターを生み出す空間づくりとが織りなす相乗効果を、ぜひたっぷりと堪能してみてほしい。

「ミュージアム」は3月16日(木)にブルーレイ&DVD発売、レンタル開始。
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